野中哲士理事が第14回日本学術振興会賞を受賞しました。

当学会の野中哲士理事(神戸大学)が第14回(平成29年度)日本学術振興会賞を受賞し、平成30年(2018年)2月7日(水)に日本学士院において授賞式が行われました。

受賞理由:
「身体―環境系における柔軟な行為制御の研究」
(Research on Flexible Action Control in Body-Environment System)

野中哲士氏は、人間の日常的な技能の制御とその獲得メカニズムの研究において、柔軟な行為制御の過程の解明に大きく寄与した。
人間の身体や、身体と環境との複雑な相互作用は、従来、行為制御を困難にする「問題」だと考えられてきた。しかし、野中氏はその複雑な相互作用こそが身体-環境系の組織化を可能にすると考え、行為の計測と独自の非線形動作解析手法を組み合わせ、身体—環境系における柔軟な行為制御の過程を明らかにした。例えば、石器制作における石の打割動作の研究では、石の縁の角度、打点から縁までの距離、打割に必要な運動量の間に不変的な関係が存在し、打割者が予測する石器の形状が打割行為の状態変化に因果的に作用することを示している。
このような発見は、従来の心理学の枠組みを越えた、環境と行為を一つのシステムとして捉える理論的枠組みにより可能となった。野中氏は、身体性認知科学、人類学、実験心理学等を横断する独創的な研究領域の創出に大きく貢献している。

リンク:第14回(平成29年度)日本学術振興会賞の受賞者決定について(日本学術振興会サイトへ)