(他学会企画)日本認知科学会2018年度 BSC研究分科会ご案内

日本生態心理学会会員各位

安田和弘会員(早稲田大学)からのイベントのお知らせを転送いたします。


日本認知科学会2018年度 BSC研究分科会ご案内

以下,「環境-身体‐脳の相互作用とリハビリテーション」というテーマで,研究分科会を開催いたします. 

分科会テーマ:
「環境-身体‐脳の相互作用とリハビリテーション」(参加費無料・登録不要)

▶企画趣旨

リハビリテーションにおいて,環境とのインタラクションや他者とのコミュニケーションをおこない,患者の学習を支援することは必須である.近年,認知科学領域においてインタラクションが何に基づいておこなわれ,ヒトにどのような作用をもたらすかの研究において, 特に,人対人,人対動物,人対環境(人工物)に共通する認知プロセスを解明し,モデル化することが進められている.このような背景のなか,リハビリテーション科学領域においても,環境や身体,脳の相互作用からリハビリテーションを捉えることで患者支援しようとする探索的研究がはじまっている.本会では,このような動向に関わる研究について,認知科学,工学,リハビリテーション科学領域の若手研究者にご講演いただき,今後の方向性を学際的に考える場としたい.

日時:3月2日(土) 13:30-17:40 
場所:早稲田大学 40号館GCS研究機構 201号室(東西線早稲田駅徒歩1分)
https://www.waseda.jp/inst/gcs/access/

13:30-13:40 分科会あいさつ・企画趣旨
青山慶(松陰大学)・安田和弘(早稲田大学)

13:40-14:40 「バーチャルリアリティ空間内における障害物回避行動」 
近藤夕騎(首都大学東京大学院)

▶概要
日常生活における環境の変化に応じた行動調整能力は加齢により低下する.また,変化する環境に応じて柔軟に行動を変化させる能力は,繰り返しの経験により習得される側面がある.しかしながら,障害物回避場面を例に取ると,練習に接触を伴う可能性が極めて高く,実環境での練習に一定のリスクを伴うことが想定される. このような問題意識のもと,われわれは狭い隙間を通過する場面をバーチャルリアリティ(VR)で再現する手法を案出した.講演では,高齢者の安全な適応的歩行トレーニングを支援するため,VR環境を用いた学習支援システムに関する研究を紹介する.

14:40-15:40 「疾患・発達から考える身体軸の認知が姿勢制御に及ぼす影響」
松田雅弘(城西国際大学)

▶概要
動作やスポーツに至るまで,身体の軸は動きの正確性や安定性を提供する重要な因子の一つである.ヒトは生後3ヶ月でMidline Orientationがみられ,寝返りを繰り返すことで左右の回転のための軸が生成される.そこからの身体軸の認知が姿勢制御や動作に必要不可欠となる.しかし,中枢神経疾患で姿勢制御が低下し,半側空間無視のように注意の側性化が起きた場合には,身体軸や正中線は大きく変化していることが研究により明らかになってきた.身体軸の生成から変化を概観し,その身体軸の認知と姿勢制御の影響について臨床上の経験と研究から概説する.(基盤研究C17K01467)

15:40-16:40 「他者を含む環境がリハビリテーションに及ぼす影響」 
児玉謙太郎(神奈川大学)

▶概要
ヒトの身体運動は,自己身体とそれを取り囲む環境,埋め込まれた文脈や課題からの制約のもと生成される.これらの間の相互作用によって出来ること/出来ないことも変わってくる.本発表では,心理学・認知科学の立場から生態学的/力学的アプローチの枠組みを概説し,近年,それらを他者とのコミュニケーションにも応用している研究について紹介する.それらの研究知見を踏まえ,リハビリテーションの実践やセラピストのスキルに関して議論したい.(基盤研究C18KT0083)

16:40-17:40 「運動情報の共感を実現するインタフェースの研究開発」 
安田和弘(早稲田大学)

 ▶概要
古典的な感覚代行デバイスにまつわる研究史,感覚間可塑性に関わる知見,そして開発中であるインタラクションを人工的に創出するシステムについて紹介する.Paul Bach-y-Ritaらに端を発する感覚代行研究では,機械による感覚器へのパターン信号入力により情報認知が可能であることを示した.この理論に基づき,発表者らは感覚麻痺のある患者でも運動パターンの認知が可能となる刺激付与装置を開発している.さらに,インタフェースを経由して運動動態を共有し,2者間のインタラクションを誘発できる共感型システムを提案した.本発表では認知科学的視点/実践者による経験知の双方からインタラクションを軸に議論したい.(基盤研究C17K01875)

企画・司会:安田和弘