設立趣意

日本生態心理学は、ジェームズ・ギブソンのアイデアを継承し、発展させることを目的に設立された。知覚システム(身体論)、生態光学(情報論)、アフォーダンス(環境論)などの構想は、人間諸科学に大きな転換をもたらす可能性がある。しかし、その試みはまだ緒についたばかりである。(人を含む)動物−環境系を基本単位とする心理学の成立は21世紀の学問に託された課題である。

この目的を達成するために、本会は、国際生態心理学会やそれが行う学術的研究活動と連携しその発展に貢献する。さらに、国内外の広い諸領域、例えば、実験心理学、発達心理学、社会心理学、コミュニケーション諸科学、生物学、動物行動学、人類学、美術・芸術学、建築学、コンピュータ科学、システム科学、応用数学、ロボティクス、哲学、運動学、ヒューマン・ファクター、理学療法、作業療法、言語療法などと交流し、生態心理学の研究対象を広げ、研究方法を洗練する。また、教育やリハビリテーションなど、社会の現場で求められている実践に貢献し、人々の生活に寄与する心理学を目指す。

日本生態心理学会の発足にあたって

生態心理学は新しい学問である。それは生を包囲していることの規模が、どれほどのものであるかを知る者だけが行いうる科学である。人文科学から自然科学まで、心理学、生物学から物理学まで、現存する多くの学問領域を包含する壮大な構想である。

ダーウィンについてのリードの発掘を思い起こすまでもなく、生態学的な科学はギブソンに限らず方々で試みられてきた。私はこの機会に、おそらくわが国が誇る生態科学者の一人である牧野富太郎(1862-1957)の言葉を引用して、この転機へのはなむけとしたい。いうまでもなく牧野は独学で植物学を創始し、わが国の植物を網羅したはじめての『日本植物図鑑』を著述し刊行した。94歳まで「植学」という一つのことだけをした人である。20歳の頃、彼は手記に、まったく新しい学問を完成させるための豊富、心得を「赭鞭一撻(しゃべんいったつ)」(植物を打ちつけて毒性を調べる意味)と名づけ、以下の15項目に書き留めている。身の引き締まる、研究への不屈の志が示されている。

  • 忍耐ヲ要ス
  • 精密ヲ要ス
  • 草木ノ博覧ヲ要ス
  • 書籍ノ博覧ヲ要ス
  • 植学ニ関係ノアル学科ハ皆学ヲ要ス(物理学、化学、動物学、地理学、天文学、解剖学、農学、画学、数学、文章学)
  • 洋書ヲ講ズルヲ要ス
  • 当ニ画図ヲ引クヲ学ブベシ(文章だけでは自然をうまく模すことができない。絵を描く技術を身につけねばならない
  • 宜シク師ヲ要スベシ
  • 吝財者ハ植学者タルヲ得ズ(学問のために財を投ずることを惜しんではいけない)
  • 跋渉ノ労ヲ厭フ勿レ(海河森林沼荒野を徘徊すべし)
  • 植物園ヲ有スルヲ要ス
  • 博ク交ヲ同志ニ結ブ可シ(遠近や年齢を問わず同志と交わり、孤立して偏することを避ける)
  • 邇言ヲ察スルヲ要ス(農夫野人漁夫小児などの些細な発言にこそヒントがある)
  • 書ヲ家トセズシテ友トスベシ(書を信じすぎてはいけない)
  • 造物主アルヲ信ズル母(なか)レ(自然の神秘をすぐに神の仕事などと片づけてはいけない)

いうまでもなくギブソンはそのオリジナルな思考を60歳になるころに結実した。それを書き残す仕事が完成したのは75歳、死の年である。たとえ視覚情報というわずか一部であっても、環境の意味を研究の俎上にのせることはかくも困難な作業なのである。ギブソンにおいてそうであったように、この作業には真の同僚が必要である。

この学会に集った一人の生態心理学者の仕事は、その他の多くの者たちによってその意味を共有され、鼓舞されなければならない。いま新しい集りをはじめた私たちは、そのためのよい習慣をつくりあげ、それを未来の生態心理学者たちに引き継ごうではないか。

(第一回日本生態心理学会大会 代表:佐々木正人 挨拶より)

理事及び役員

  • 理事-代表

三嶋 博之(早稲田大学)

  • 理事-編集

染谷 昌義(高千穂大学)・ 廣瀬 直哉(京都ノートルダム女子大学)・ 野中 哲士(神戸大学)

  • 理事-企画・広報

古山 宣洋(早稲田大学)・ 右田 正夫(滋賀大学)

  • 理事-会計

柴田 崇(北海学園大学)

  • 理事-庶務

丸山 慎(駒沢女子大学)

  • 理事-事務局幹事兼任

青山 慶(松蔭大学)

  • 事務局幹事

佐藤 由紀(玉川大学)

 

(2016年11月理事選挙実施)

日本学術会議協力学術研究団体

2016年2月より日本学術会議協力学術研究団体に指定されました。

沿革

2000年8月18日〜24日
日本学術振興会の支援の下、東京大学本郷キャンパスにて The International Society for Ecological Psychology 会長 Prof. Robert E. Shaw (University of Connecticut)連続講義が開催される。

2000年8月25日
Prof. Robert E. Shaw 連続講義の出席者の一部(20名)を発起人として、日本生態心理学会が発足される。代表:佐々木正人(東京大学)。

2002年
“Ecological Psychology” 編集委員長/The International Society for Ecological Psychology 事務局長 Prof. William M. Mace (Trinity College)連続講義を共催する。

2004年2月14日〜15日
日本生態心理学会第1回大会(大会委員長:佐々木正人)が東京大学本郷キャンパスにて開催される。

2004年2月14日
学会誌『生態心理学研究』第1巻第1号(編集委員長:古山宣洋)が刊行される。

2004年5月
Prof. Michael T. Turvey(CESPA, University of Connecticut), Prof. Claudia Carello(CESPA, University of Connecticut)連続講義を共催する。

2007年7月1日〜6日
The 14th biannual International Conference on Perception and Action (ICPA14) を横浜赤レンガ倉庫にて主催する。

2008年8月23日〜24日
日本生態心理学会第2回大会(大会委員長:鈴木健太郎)が札幌学院大学にて開催される。

2010年3月6日〜7日
エコロジカルアプローチ研究会、日本認知科学会「身体、システム、文化」分科会との共催により、第1回「生態心理学とリハビリテーションの融合」研究会(委員長:和泉謙二)が静岡にて開催される。

2010年9月11日〜12日
日本生態心理学会第3回大会(大会委員長:廣瀬直哉、副委員長:岡田美智男)が京都ノートルダム女子大学にて開催される。

2012年3月3日〜4日
生態心理学とリハビリテーションの融合研究会、日本認知科学会「身体、システム、文化」分科会との共催により、第2回「生態心理学とリハビリテーションの融合」研究会(委員長:真下英明)が京都にて開催される。

2012年7月7日〜8日
日本生態心理学会第4回大会(大会委員長:伊藤精英、運営委員:櫻沢繁、プログラム委員:古山宣洋・三嶋博之)が公立はこだて未来大学にて開催される。

2014年3月22日〜23日
生態心理学とリハビリテーションの融合研究会との共催により、第3回「生態心理学とリハビリテーションの融合」研究会(委員長:上西啓裕)が和歌山にて開催される。

2014年7月12日〜13日
日本生態心理学会第5回大会(大会委員長:岡田美智男、プログラム委員長:野中哲士)が豊橋技術科学大学にて開催される。

2015年3月23日
Prof. Eugene C. Goldfield (Harvard Medical School, Boston Children’s Hospital)講演会が東京大学本郷キャンパスにて開催される。

2015年10月29日
Prof. Benoît Bardy(The University of Montpellier / The Institut Universitaire de France)講演会が早稲田大学早稲田キャンパスにて開催される。

2016年3月5日〜6日
生態心理学とリハビリテーションの融合研究会との共催により、第4回「生態心理学とリハビリテーションの融合」研究会(委員長:杉山智久)が藤田保健衛生大学にて開催される。

2016年9月3日〜4日
日本生態心理学会第6回大会(大会委員長:柴田崇、副委員長:染谷昌義・奥野真之)が北海学園大学豊平キャンパスにて開催される。

2016年2月
日本学術会議協力学術研究団体として指定される。

会則・施行細則

準備中